「SDGsに向けた主体的な学びと実践」
捜真女学校 千葉 眞智子
1.主体的な学びを促す授業とは
主体的な学びを促す授業とは、どのような授業なのでしょうか?生徒たちは、様々な教科の学習を通して、環境問題、戦争や紛争など社会には深刻な課題があることは知っています。そしてそのために自分たちで何かしたいとは思いつつ、一歩を踏み出せずにいるのではないかと思います。そんな生徒たちに教員がどのように働きかければ、生徒たちは自ら動きだすのでしょうか?
2.捜真SDGs実行委員会
捜真女学校には、「捜真SDGs実行会」というクラブでも委員会でもない、全く自主的に集まって活動している団体があります。この団体は、家庭科の授業をきっかけに2016年にできた団体で、現在中1~高3まで約50名の生徒が登録しています。
発足のきっかけは、高校2年生の家庭総合「消費者の権利と責任」の授業で、カカオ農場での児童労働の実態を知ったことからでした。この授業を受けた生徒たちは、「知っただけで終わらせたくない、私たちには知った責任がある」と自ら動き出したのです。具体的には校内でのフェアトレードチョコレートの販売と献金活動でした。
そして翌年、家庭総合の授業「持続可能な社会をめざして」の分野でSDGsについて学ぶと、今度は文化祭でSDGsタピオカドリンク」の販売を行いました。ストローは金属製、茶葉はフェアトレードのもの、容器は土に還るものを使用したタピオカドリンクです。この活動により学校全体でSDGsの活動に取り組みたいといった声が上がり「捜真SDGs実行会」が立ち上がりました。
「捜真SDGs実行会」では現在、SDGsの啓蒙活動を行うチーム、プラスチックごみ問題に取り組むチーム、小学生用にSDGsの絵本作りをしているチームなど、それぞれの興味関心に合わせて、5つのチームが活動しています。勤務校は、ミッションスクールでありキリスト教の教えが根底にあるという土台はありますが、日頃から生徒たちは「人のために何かしたい、困っている人を見ると放っておけない」といった強い想いがあるのを感じていました。今回の実践は、生徒たちの「何かしたい」という想いと、家庭科の授業がうまく結びついた例だと思います。
3.主体的な学びのために教員にできること・教員がやるべきこと
主体的な学びにつなげるために、私自身が意識しているのはどの分野の授業でもその内容を「自分ごと」と受け止められるよう言葉を選んで話すことです。それと個人個人の生活は、私的なものではなく常に社会に繋がっているということを意識させるようにしています。
その社会というのも、自分の想像する範囲をはるかに超えた、グローバルなものであったり、地球規模のものであったりもします。そして最も大切なのが、社会の良い点も悪い点も、誰か知らない大人が作り上げていくのではなく、これから社会に出る生徒たち自身がつくりあげていくものなのだ・・・ということを強調することです。
私たち教員が、授業を工夫してみたり、投げかける言葉を選んでみることで、生徒は新たな気づきに出会ったり、何かを始める熱量へと向かっていくのかも知れません。家庭科の学習を通して生徒は日々の暮らしをよりよくし自信をつけていきます。その自信は必ずや何かを生み出すことを信じて、今後も家庭科の可能性を生徒と一緒に探っていきたいと思っています。