持続可能なエコライフと家庭科教育
by HELCY Staff Member: Sachiko NAKANISHI
東京ガス株式会社、都市生活研究所所長の三神彩子氏をお招きし、省エネ行動を促進するための教育ツールの開発をはじめ、暮らしに関する省エネの意識啓発に向けたとりくみについて講演いただきました。
講演の概要
まず、人々の暮らしにガスがどのように影響を及ぼしたか、明治時代のガス灯からガスによる調理、暖房や電気、また現在の安全安心・SDGsの取り組みが紹介された。
次に持続可能なエコライフの必要性を政府の目標値を用いて共有し、環境問題への関心が男女とも60代と10代が高いデータ示し、特に10代は学校の授業がきっかけになっていることが報告され、意識や行動を変えるには学校教育が重要であると述べた。
家庭科では学習指導要領が約10年ごとに改訂される中で、前回の改訂から今回の改訂にかけて「消費生活・環境」が指導すべき内容として盛り込まれ、能動的な体験的な学習が求められるとして、理科、社会科、総合的な学習の時間との連携によるカリキュラム・マネジメントへの期待が示された。
さらに環境省ナッジ事業である省エネナッジ教育プログラムの概要とその効果について全国の学校での実証実績を示し、教材が紹介された。学習者が省エネ行動変容に至るまでのステージごとの支援策には、行動科学の知見が活用されていた。
省エネ学習の一つとしてエコ・クッキングが紹介され、環境負荷を考えながら買い物から調理、食事、片づけまで行う調理で、CO2の排出量を約半分に減らせること、学校教育だけでなく社会全体への普及・促進・定着にむけた指導者養成の実際について述べられた。
最後に、家庭科で使える省エネツール(書籍、ゲーム、Webサイト)が紹介され、私たちは生涯にわたり、健康で心豊かな充実した生活を送りたいと考え、快適で安全、健康や地球環境に配慮した生活とそれを支える地域社会を目指していかなげればならないが、家庭科はその道しるべとなる教科であり、2030年2050年にむけて家庭科の先生方とともにいろいろな取り組みをしていきたいと結ばれた。
全体ディスカッション
参加者から講演への感想や質疑が述べられた。「環境への意識は高められているとは思うが行動変容まで至っていないように思う。」「消費・環境は最後に扱っていてどうしても駆け足になってしまう。最初に学習するようにカリキュラムを変えてみようかと思う。」という発言があった。また、「環境に関わる授業をする際に洗い物をする際にふき取ってから洗うとした場合、水の使用量は少なくなるが、ごみが増えるといった葛藤がある。選択の幅を広げたいが正解が難しい。」という発言に対し、「様々な選択がある中で長く使える・循環するという軸をもち、ベストではなくてもセカンドベストという考え方でもよいのではないか。」と講師のアドバイスがあった。
事後アンケートから
全ての参加者が「満足」、今回の研修の内容は「今後の授業に取り入れられる」と回答した。他領域・他教科との横断的な学び、省エネナッジ教育を学校全体で取り組みたい、生徒の意識と行動変容につながる学習への確信など、環境に関わる授業にむずかしさを感じている参加者の疑問の解決や知識のアップデート、今後の授業でのあらたな取り組みの具体的なイメージ構築ができた。